元銀行員の弁護士による企業金融 事業再生 コンサルティング

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Q&A 金融機関取引の基本

その他編

Q1

 銀行口座に心当たりのない先からの入金があったのですが、どうすればよいでしょうか。

A1

 まず、そのような入金であっても、銀行との間では預金が成立します(最高裁平成8年4月26日判決)。
 しかし、誤振込みをした振込依頼人との間では、当該預金債権は原因関係のない不当利得ということになるので、振込依頼人に対し返還義務を負うことになります(民法703、704条)。
 返還義務を負うということは、裁判になれば返還を命じる判決が出され、これに従わなければ財産を強制的に換価してその代価から返済をさせられるということを意味します。
 また、誤振込みであることを分かった上で銀行から預金を引き出した場合は、詐欺罪(刑法246条1項)に問われます(最高裁平成15年3月12日判決)。
 預金が成立しているのに、それを引き出すと詐欺罪になるというのは分かりにくいですが、上記最高裁判決は「・・・受取人においても、・・・自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、・・・誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務がある・・・社会生活上の条理からしても、誤った振込みについては、受取人において、これを振込依頼人等に返還しなければならず、誤った振込金額相当分を最終的に自己のものとすべき実質的な権利はないのであるから、上記の告知義務があることは当然というべきである。そうすると、誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する。」としました。
 この判決は窓口で払戻しをした事案ですが、ATMで現金を払戻しをした場合は窃盗罪(刑法235条)、ATMで自分の口座等に振り替えをした場合は電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)となりえます。
 したがって、このような場合には、払戻しをしたり口座振替をしたりしてはならず、銀行に誤振込みである旨を告知しなければなりません。